有機農業への移行は「環境にやさしい」のか?
有機農業には「環境にやさしい」というイメージがある。だが、実際には収穫量が減少するため、温室効果ガスを貯蔵している土地の農地転換が必要となり、温室効果ガスの排出量増加につながるとの研究が発表された。 by James Temple2019.11.20
有機農業は、農業から直接生み出される気候の汚染を削減できる。同じ量の食糧を生産するのに、いま以上に多くの土地を必要としなければ、それ自体は素晴らしいことだろう。
だが、収穫量の不足分を補うために、二酸化炭素を蓄える草原や森林をさらに切り開けば、他の方法で減らせる温室効果ガスよりも、かなり多くの温室効果ガスを放出してしまう。ネイチャー ・コミュニケーションズ誌に掲載された新しい研究がこんな事実を明らかにした。
最近の別の研究でも、土地利用方法の変化を考慮すれば、有機農業は従来の農法よりも気候汚染を引き起こすと結論付けている。今回の新しい論文の中で、英国のクランフィールド大学の研究者は、英国とウェールズ全土が、完全に有機農業に移行した場合に何が起こるのかを分析し、この問題について広範囲にわたって検証している。
まず、良い面は、生産単位あたりの温室効果ガスの直接的な排出量を家畜では5%、作物栽培では20%削減できることだ。悪い面は、農産物の収穫高が40%減少するため、英国人の空腹を満たすためには海外から食糧を輸入せざるを得なくなるということだ。収穫減少による需要の急激な増長に対応するために利用される土地の半分が、炭素を植物組織、根、土に蓄える草原から転換されたものだとすれば、全体的な温室効果ガスの排出量は21%増加してしまう。
何よりも、有機農業では、合成肥料や農薬、遺伝子組換え生物などの使用を避けている。これらはすべて、その土地における作物の生産量を増やすものだ。その代わり、有機栽培農家は動物の肥料や堆肥、輪作(りんさく)といった栽培方法などに頼る。輪作とは、1年を通して異なる作物を栽培して、土壌の状態を改善する栽培方法だ。
今回の研究では、こういった生物学的な投入物は、窒素ベースの合成肥料よりも温室効果ガスの排出量が少ない …
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