「昔はよかった」は本当か?過去200年分の文献を分析した新研究
昔の人の方が幸福に感じていたのではないか? 過去200年にわたる、数百万もの文章で使われた単語に隠された感情を分析する新しい手法のおかげで、こうした疑問に対するはっきりとした見解を持てるようになった。意外に思うかもしれないが、米国ではどうやら今の方が昔の人よりも幸福だと感じているようだ。
トーマス・ヒルズ博士が主導する英国のウォーリック大学の研究者チームが、1820年から2009年の間に出版された800万冊の書籍および6500万本の新聞記事を分析した。チームはまずさまざまな言語の何千という単語に「幸福度点数(happiness scores)」を割り当てた。続いて、4つの異なる国について、肯定的な言葉と否定的な言葉の相対的な割合を計算した。
これらの数字を使って、英国、米国、ドイツ、イタリアにおける歴史の幸福度指数を作成した。研究チームは、たとえば「ゲイ(gay)」のように、単語によっては時間の経過とともに意味が変わるものがある事実も考慮した。収集には過去発行された全書籍の6%以上のデジタル記録に相当するグーグル・ブックスを使い、検証として、調査結果を1970年代に開始された幸福感(well-being)に関する調査データと比較した。この調査データは、すべての欧州連合(EU)加盟国で毎年実施されている対面インタビュー約1000人分を通じて収集されたものだ(ユーロバロメーター(Eurobarometer) )。研究成果は、10月14日付のネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア(Nature Human Behavior)で発表された。
処理されたデータの数は膨大なものだが、結果については、世界史をきちんと把握している人にとってはあまり驚くようなものではないかもしれない(たとえば、2つの世界大戦はほとんどの人が大変不幸に感じた)。米国において幸福度が低かったのは1975年のサイゴン陥落の頃だったが、英国の場合は1978~79年の「不満の冬」、公共部門でストライキが広まった時期だ。
幸福感や幸福度を測る新しい方法は、国の政策により多くの情報を提供できる。たとえば、英国の国家統計局では2010年から国民の幸福感を測定している。そして今年はニュージーランドが国民の幸福感を経済計画の公式測定基準に含めることを決定した。文字で書かれた資料を使って歴史的背景を提供する取り組みは、生まれたばかりの学問分野にとっては大変貴重な試みになるかもしれない。