空気中から効率よく「きれいな水」を集める新材料の研究
地球上には、清潔な水を手に入れられなくて衛生上の問題に直面している人々がいる。きれいな水を作り出す従来の方法はエネルギーを消費する上に高価であることが多く、農村部や低所得地域では導入が困難だが、空気中から水を収集する「露収穫」技術の可能性を示す新研究が発表された。 by Emerging Technology from the arXiv2019.10.01
21世紀のエンジニアリングにおける大きな課題の1つは、世界中の人々に清潔な飲料水を提供することだ。人口の半分以上が清潔な水を利用できない国もあり、世界の3人に1人は水を必要とする基本的な衛生設備を利用できていない。
これが一般的な下痢と健康不良に関する重大な原因となっている。下痢関連疾患のせいで毎日5000人以上の子どもが死亡しているという推定もあり、清潔な水を作り出す方法を見つけるのは重要な課題となっている。
問題は、清潔な水を作り出す技術のほとんどが、貧しい国にとって法外な値段であるということだ。蒸留法、逆浸透法、廃水のリサイクルといった従来の方式は、エネルギーを消費するうえ費用がかかる。太陽エネルギーに依存する受動的なテクノロジーには、特殊な材料と太陽光集光器が必要であり、かさばるうえに高価だ。
しかし、こんな気が滅入るような計算を変える可能性のある別の手法がある。その手法とは、空気を冷却し、そこに含まれる水蒸気を凝縮させて収集する「露収穫」だ。「この受動的テクノロジーは、飲み水の収集に大きな可能性を秘めています。なぜなら大気中には大量の水蒸気が蓄積されているからです」。中国の南京にある南東大学のミンハオ・ドンのチームはいう。
ここで明らかな疑問が湧く。この方法で一体どれだけの水を集められるのか?そして、もっともうまく収集する方法は何なのか?
ミンハオたちのチームは、「露収穫」テクノロジーの基本的な限界を初めて計算し、従来の手法を単純に変更するだけで、実用性と収穫量を大幅に改善できる方法を見い出した。
まず背景となる情報について説明しよう。受動的な露収穫器は、夜空に熱を放射する材料でできた薄い平らなシートである「凝縮器(コンデンサー)」を備える( …
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