気候変動アクティビズムは
世界を動かすか?
9月23日に開催された国連気候行動サミットにおけるグレタ・トゥーンベリの演説は大きな反響を呼んだ。だが、ほとんどの経済主要大国の政治家たちは腰が重く、一般市民らも問題解決のためにコストを負担することについてはいまだ消極的だ。 by James Temple2019.09.26
9月20日、世界中の主要都市の街中に100万人以上の学生、労働者たちが押し寄せた。気候変動抑止を求める抗議行動として史上最大規模となった。
9月23日にニューヨークで開催された国連気候行動サミットに先駆けて始まったグローバル気候ストライキは、最新かつ史上最大規模の運動であった。この気候変動アクティビズムは、強力な世界的ムーブメントになりつつある。
「確かに気候ストライキが転換点になったように感じています」。カーネギーメロン大学の「気候適応のためのエンジニアリング&レジリエンス・センター(Center for Engineering and Resilience for Climate Adaptation)」のコスタ・サマラス所長はそう話す。「気候変動に関する政策の進展は政治家がもたらすものですが、政治家たちは自分たちへの票を計算しています。今回の活動の参加者たちの中には、たくさんの潜在的有権者がいたわけです」。
当然ながら、本当に問うべきは、政治家たちに十分なプレッシャーをかけ、十分な票数が集められるかどうかだ。進歩的な政治家による大胆な提言だけでなく、対立の深い政府間で厳格な政策や条約を成立させられるかが重要となる。
今回の抗議行動は、今後の人生における気候変動に懸念を抱く若者たちが中心となって組織された。表明された要求は、化石燃料使用の即時中止、100%再生可能エネルギー源への迅速な移行、そして「公正、補償、気候正義」である。
世界的にこのような行動を求める声が高まっていることに対し、一部の政治家が注目しているのは間違いない。包括的な数十億ドル規模の気候変動対策計画を用意することは、次の米国大統領選挙で民主党の大統領候補の座を狙う候補者にとっては、基本的な入場料のようなものと言える。
しかし、気候変動に対する有権者の考え方は十分に変化したと言えるのだろうか? 世論調査の結果は、複雑な状況を示している。
高まる警戒、消えない分断
イェール大学とジョージ・メイソン大学が実施した一連の世論調査によると、気候変動に対する米国民の不安が高まっていることは確かだ。
気候変動に「危機感」または「懸念」を抱いている国民の割合は、2013年から2018年までの間に17ポイント増加し、今や回答者全体の約60%を占める。「否定的」や「疑わしい」、「関心がない」層は、同期間で32%から23%に減少した。残りの17%が中立的、または「慎重」派だ。
今年初めに公開されたピュー研究所(Pew Research Center )の調査によると、世界的な懸念はより高いものとなっている。26カ国を対象とした調査では、回答者の中央値68%が世界的な気候変動を重大な脅威、20%が小規模な脅威と考えており、まったく脅威ではないと答えたのはわずか9%だった。調査対象国のうち13カ国において、回答者の過半数が、地球温暖化はイスラム国(ISIS)やサイバー攻撃、北朝鮮の核計画、世界経済の状況などを差し置いて、自国の「最上級の脅威」だと考えていることが明らかになった。
しかし、こうした見方に関しては政党間での深い対立が続いており、米国ではその傾向が顕著だ。先ほどのイェール大学とジョー …
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