人工知能眼科医は、機械学習で医学を一変させる
グーグルの研究者は、専門医と同等に一般的な眼病を診断できるようにアルゴリズムを訓練しようとしている。 by Will Knight2016.11.30
グーグルの研究者は、目を検査するアルゴリズムで、自動的に一般的な失明の危険がある眼病を発見する方法を割り出そうとしている。人工知能によって医学があっという間に変貌する可能性がある。
グーグルのアルゴリズムは、網膜画像を検査し、糖尿病網膜症(糖尿病患者の約3分の1が発症する)を検知できる。高度な訓練を受けた眼科医でも発見できるが、アルゴリズムは、グーグルで無数のWeb画像の分類に用いられる機械学習の手法が活用されている。
糖尿病網膜症は、目の血管が損傷を受けて発症する病気で、徐々に視力が低下する。初期段階であれば治療できるが、患者には初期症状がなく、検査が欠かせない。専用機器で記録された患者の網膜画像に、出血や分泌液の漏出の兆候がないか専門家が観察し、診断される。
病気の自動検出の分野によっては、診断の効率と信頼性を改善できる可能性があり、特に必要な専門家が不足している分野では重宝されるだろう。「機械学習による診断の研究で最も興味深いのは、客観性を改善させ、最終的には医療の正確さと品質も改善させる可能性があることです」とオレゴン健康科学大学ケーシー眼研究所で臨床医を務めるマイケル・チャン教授(眼科学)はいう。
人工知能(AI)が過去に医学分野で収めた成功には、矛盾した部分がある。医師に助言する知識データベースを使ったシステムは、状況によっては医師よりも優れた機能を発揮するが、システムの導入には制限がかかっている。それでも、機械学習の能力、とりわけ深層学習として知られる手法によって、将来的にAIは今よりも普及するかもしれない(“10 Breakthrough Technologies 2013: Deep Learning”参照)。アルファベット(グーグル)の子会社で、AIを専門にするグーグル・ディープマインドのチームも同様の研究に取り組んでおり、コンピューターにOCTスキャン処理を訓練させ、黄斑変性や他の眼病の兆候を見つけようと、ロンドンのムーアフィールド眼科病院の研究者と連携している(「眼病の早期発見に挑むグーグルの人工知能子会社」参照)。
火曜日に米国医師会雑誌に掲載された網膜画像の研究は、同誌のハワード・バークナー編集長によれば、深層学習についての初の論文だ。
論文の著者は、グーグルのコンピューター科学者と、米国やインドの医療研究者で構成され、網膜画像を分析するアルゴリズムを開発した。しかし、既存の眼科学ソフトとは異なり、研究中のアルゴリズムは病気の兆候と思われる画像の特徴を認識できるようには明確にプログラミングされていない。単純に何千もの健常な目と病気の目を観察し、アルゴリズムが自動で症状を発見する方法を割り出したのだ。
研究者が作成したのは訓練用の網膜画像12万8000枚で、少なくとも3人の眼科医によって分類された。アルゴリズムの訓練後、研究者は1万2000枚の画像で動作をテストし、アルゴリズムの機能が症状や重症度の判定は、専門家と同等かより優れていると判明した。
グーグルの研究者は、インドのアラビンド医療研究財団の科学者と連携し、実際の患者で臨床試験中だ。このプロジェクトで、患者は通常の診療を受けており、患者の画像は比較のため深層学習システムにも取り込まれている。グーグルの研究者でプロジェクトにも関わるリリー・ペン医師は、この研究の成果はまだ発表できる段階ではないという。
深層学習は、放射線学や心臓病学など、画像分析を中心にさまざまな医療分野で導入されるかもしれない。しかし、導入のための最大の課題は、システムの信頼性を証明する確かな証拠を出すことだ。トロント大学で深層学習をゲノムデータに適用しているブレンダン・フレイ教授は、研究者は特定の結論に達する方法を説明できるような機械学習システムを開発する必要があるという(「人工知能と言語」参照)
ペン医師は、フレイが忠告する点にチームはすでに取り組んでいるという。
「説明が非常に重要なのは、理解しています」
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- ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
- MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。