KADOKAWA Technology Review
×
始めるならこの春から!年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
「巨大シャボン玉」作りには何が必要か? 現代科学の謎に迫る
人間とテクノロジー Insider Online限定
The chemistry behind how you make a record-breaking giant soap bubble

「巨大シャボン玉」作りには何が必要か? 現代科学の謎に迫る

ギネス記録に載るような巨大なシャボン玉作りの妙技には、現代の科学をもってしても謎が多い。米アトランタのエモリー大学の研究者たちは、どうすれば巨大なシャボン玉を作れるのかを解明するため、薄いシャボン膜の化学的性質について調べた。 by Emerging Technology from the arXiv2019.09.05

2015年7月20日、世界記録樹立を目指してゲイリー・パールマンと少数の愛好家のグループが米オハイオ州クリーブランドの公園に集まった。目標は史上最大の空中に浮かぶシャボン玉の作成だ。

パールマンが使用したのは糸を結び付けた2本の釣竿だ。水、石鹸、ポリマー添加剤を混ぜた特殊なシャボン玉液にその糸を浸して持ち上げると、シャボン玉液をすくい上げた糸に薄いシャボン膜が張った。パールマンが2本の釣竿を揺り動かすと、空気の動きでシャボン膜が伸びて広がり、巨大なシャボン玉が形成された。

それと同時に、第三者の観測員がシャボン玉の体積を計算するため、さまざまな角度からシャボン玉を写真撮影した。その結果、シャボン玉の大きさは96.27立方メートルと計測された。その日、パールマンの挑戦はギネス記録を更新した。

この巨大シャボン玉のギネス記録更新は、科学的業績としては残念ながら過小評価されている。それでも、米アトランタのエモリー大学のスティーブン・フレイジャーの研究チームにとっては、一連の難題を突きつける興味深いものだった。

シャボン玉は、厚さわずか数マイクロメートルの壊れやすい薄膜でできているが、パールマンが作り上げた史上最大の巨大シャボン玉の表面積は100平方メートル以上あったに違いないとフレイジャーたちは指摘する。わずか1つの穴でもシャボン玉は破裂する。「どうすればこれほど巨大な膜を作成し、安定性を維持できるのでしょうか?」とフレイジャーたちは問う。

石鹸膜の特性と、さまざまな種類のポリマーを添加したときの石鹸膜の特性の変化について研究してきたフレイジャーたちの研究チームは最近、その問いに対する答えを導き出した。そして、その結果得られた、シャボン玉形成の科学と世界記録樹立に最も有利な大気条件に関する独自の洞察を発表した。

シャボン玉作りについて少し説明しよう。シャボン玉愛好家は長い間、シャボン玉作りに最適なシャボン玉液の混ぜ合わせ方について議論してきた。「巨大シャボン玉作りに関心がある人は、『シャボン玉ウィキ(Soap Bubble Wiki)』を参考にしてください。最適なシャボン玉液の作成に役立つ豊富な経験に基づいた情報とレシピが見つかります」。

シャボン玉愛好家の間では、最高のシャボン玉液の組み合わせは水、食器用洗剤(「ドーン・プロ(Dawn Pro)」の人気が高いよう …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
  2. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  3. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
  4. Tariffs are bad news for batteries トランプ関税で米電池産業に大打撃、主要部品の大半は中国製
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る