遺伝子編集ベビーの研究者、
医療観光ビジネスを計画
遺伝子編集ベビーの誕生を発表して世界を震撼させた中国人科学者は、富裕層向けの医療観光ビジネスを計画していた。「3人の親を持つ子ども」を誕生させたことで知られる中国人医師とも事業協力について話し合っていたという。 by Antonio Regalado2019.08.07
世界初の遺伝子編集ベビーを生み出して不名誉な結果となった中国人科学者は、「デザイナー・ヒューマン」を医療観光ビジネスにすることを望んでいた。
サイエンス誌が8月1日に発表した調査結果によると、HIVや心臓発作などの健康上の問題に耐性を持つように遺伝子改変した子どもを作る会社のアイデアについて、賀建奎(フー・ジェンクイ)元准教授はアドバイザーやパートナーと話し合っていたという。
フー元准教授は、ビジネスの拠点を中国やタイに置き、他国からエリート層の顧客を呼び込もうとしていたようだ。
たとえばフー元准教授は、昨年8月から、不妊治療で成功している中国系米国人医師ジョン・チャンと数回会っていた。チャンがニューヨークで経営する「ニュー・ホープ受胎センター」は、米国で特に繁盛している医院の1つだ。2人は中国での医院の共同開設について話し合っていた。別のアドバイザーが語ったところによると、フー元准教授は「遺伝子医療観光」に特化した新会社を計画していたという。
フー元准教授のビジネスプランは予備段階で、細部は詰められていなかったようだ。だが、計画は2018年11月に崩壊した。フー元准教授が遺伝子編集技術「クリスパー(CRISPR)」を用いて、HIVに耐性を与える目的で双子の女の子のDNAを改変したことを発表し、世界中を驚愕させたからである。
フー元准教授の発表にはすぐに反応があったが、それは圧倒的にマイナスの評価だった。フー元准教授は自宅待機処分となっており、刑事責任を問われる可能性がある。
この事件は、ヒト胚や卵子に遺伝的変化を引き起こすような「生殖細胞系列」の操作をそもそも許可すべきかどうかという疑問を再燃させた。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は7月26日、現時点でデザイナーベビーを生み出すのは「無責任」であり、「影響について適切な検討がなされるまで、すべての国において当該分野でのさらなる研究を禁止すべき」と述べた。
しかしながら、遺伝子操作は不可避であり、遺伝的疾患を撲滅する可能性のある方法だとみなす医療専門家もいる。そのような専門家は、いずれ病院で提供が始まり、必要とあらば秘密裏に実施されるだろうと予測している。
ビジネス面での展望
2年の準備期間を経て、中国・深セン市の南方科技大学(当時)で活動するフー元准教授のチームは、2018年初頭までに最初のクリスパーベビーの誕生に挑戦する準備を整えていた。フー元准教授は、体外受精よりも重要視されるであろう科学的な成功を収め、中国を世界に認めさせ、栄光をもたらすことを夢見ていた。
2018年4月までには、主な知人に自 …
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