清華大学がAI専用ハイブリッド・チップ、自律「自転車」で実証
大したものではないように見えるかもしれないが、この不安定な自律運転自転車は中国の先端チップ設計における専門性向上の象徴だ。
この自転車は自分でバランスを取るだけでなく、自動で障害物を避け、単純な音声コマンドにも反応できる。だが重要なのは自転車に搭載されている頭脳だ。ここには「チャンジック(Tianjic)」と呼ばれる、新種のコンピューター・チップが使用されている。開発したのは北京のトップ学術機関のひとつである清華大学の施路平(シ・ルーピン)教授とその同僚たちだ。
チャンジック・チップはコンピューティングに対する異なる2つのアーキテクチャ・アプローチをまとめ合わせることを目的としたハイブリッド設計が特徴だ。2つのアプローチとは、従来型のフォン・ノイマン型設計と、神経学に着想を得た設計である。2つのアーキテクチャは協同で人工ニューラルネットワークを実行し、従来のソフトウェアと同じように、障害物の検知、モーターおよびバランスの制御、音声認識をする。
7月31日付けでにネイチャー誌に掲載されたチャンジック・チップと自転車に関する概要を示す論文によると、こうしたハイブリッド型アーキテクチャが人工知能(AI)の未来には不可欠となり、AIのより汎用的な形への道筋を示す可能性さえあるという。この主張は、現在のAIがAGI(汎用人工知能)には程遠い段階にあることを考えればやや大胆な主張だが、チャンジック・チップはAIアルゴリズム実行に最適化した新型チップ設計の重要さが増していることを示している。
チャンジック・チップは、中国が独自のチップ設計力をどれだけ伸ばしているのかを知る手がかりになる。MITテクノロジーレビューが以前の記事で示したように、中国は長年にわたり、独自のチップ産業を構築するのに苦戦してきた。この点は中国の技術力における大きな弱点となっており、米国との間で進行中の貿易戦争においても利用されてきた。最先端のコンピューター・チップ製造には依然として手が届かないものの、中国の研究者らは他のどの国よりも優れたAI専用チップを作り出せることを示している。