GANでがん診断の精度向上、独研究者が新手法
機械学習手法の1つである敵対的生成ネットワーク(GAN)は、ディープフェイク画像や映像を作成するアルゴリズムとして、最近少しばかり不当な評価を与えられている。しかし、本物にしか見えないような画像を合成できるGANの能力は、医療診断に大きな恩恵をもたらすかもしれない。
深層学習アルゴリズムは画像のパターンマッチングに優れているため、 CTスキャンでさまざまな種類のがんを検出したり、MRI(核磁気共鳴画像法)で病気を識別したり、レントゲンで異常を識別したりするよう訓練できる。だが、プライバシーの問題から、アルゴリズムを訓練するのに十分なデータを研究者が持っていないことも少なくない。ここで役立つのが、GANというわけだ。GANなら本物の画像と区別がつかないほどそっくりな医用画像を合成できるので、データセットを必要な量まで効率よく増やせる。
だが、GANを用いて医用画像を作成するのには別の困難な課題がある。深層学習アルゴリズムによる予測の正確さを高めるには、高解像度の画像を用いて訓練する必要があるが、特に3Dにおいて、高解像度画像を合成するには多大な計算力が必要となる。つまり高価で特別なハードウェアが必要になるわけで、そうなると、多くの病院で大々的に使用することは現実的でなくなる。
ドイツのリューベック大学医学情報学研究所の研究者グループは、この処理に必要な計算機資源を大幅に減らすための新しい方法を提案した。同グループは、GANの実行する処理を複数の段階に分けたのである。まず、画像の全体を低解像度で生成し、その後、小さな領域の1つずつについて、正しい解像度を持つ詳細な画像を生成していくという方法だ。同グループは実験を通じて、この方法を使えば、少ない計算資源で本物に近い高解像度の2Dおよび3D画像を生成できるだけでなく、画像サイズに関係なく費用も一定に保てることを示した。