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「老舗」巨大テック企業IBMはMITとの共同研究で何を目指すのか?
Justin Saglio
人工知能(AI) 無料会員限定
How a century-old tech giant is making a comeback with AI

「老舗」巨大テック企業IBMはMITとの共同研究で何を目指すのか?

「老舗テック企業」のIBMはMITとのパートナーシップで、AI分野での強大な地位を再び築こうとしている。その狙いとビジョンをIBM幹部が語った。 by Karen Hao2019.06.25

グーグルやアップル、あるいは最先端のスタートアップ企業と比べると、IBMはもっとも魅力ある巨大テック企業とは言えないかもしれない。だが、1911年から存続する長い歴史を考えれば、何らかの正しいやり方があるに違いない。

その秘密はIBMの研究部門にある。世界12カ所にある研究所に3000人の研究者を配置し、エマージング・テクノロジーの最新動向を常に把握している。これまでの数十年間、IBMは今後の展望を見据えて事業部門を創設・適応させるための年次プロセスに取り組んできた。

そのプロセスは確かに完璧なものではないかもしれない。IBMは全盛期において人工知能(AI)研究の有力企業であり、機械にチェッカーの遊び方や、人間のチェス王者の倒し方を教えるといったことは画期的な出来事だった。だが現在、世間の注目を集めているのはオープンAI(OpenAI)やディープマインド(DeepMind)といった新顔たちだ。その間、IBMはワトソン(Watson)の誇大広告に対する代償を支払うこととなった。

だがIBMは2年前、研究者と知財の共有を目的にマサチューセッツ工科大学(MIT)と提携して以来、復活を目指している。MITテクノロジーレビュー主催のイベント「エムテック・ネクスト(EmTech Next)」では、IBMでエマージング・テクノロジー・パートナーシップを担当するソフィー・ヴァンデブローク副社長を招き、長期的なイノベーションのための戦略について話を聞いた。

(以下は壇上での質疑応答の抜粋と、イベント終了後に尋ねた一連の補足質問のやり取りである。回答は、より簡潔で明瞭になるように編集してある)

——あなたがIBMに入社した時、IBMはAI研究の有力企業としての足場を失った状態だったと思います(日本版編注:ヴァンデブローク副社長はゼロックスCTOなどを経て2017年にIBMに入社した)。最初にこの課題に直面した時、どのように取り組んだのか説明してください。

将来何が来るのか考える上で役立つのが、IBMが毎年取り組んでいる「グローバル・テクノロジー・アウトルック(GTO)」です。研究者が「この重要なトレンドに注目してください。当社の盲点かもしれないし、当社やお客さまが次の10億ドル規模のビジネスにできる可能性もあります」といった、将来の展望を予測する方向性を示すものです。これが私たちが将来に対してどう取り組むかを考える方法です。

最初にIBMに入社したとき、私はこのGTOのプロセスを主導していました。そしてすぐに私たちは、AIが大きな成長が見込まれるテクノロジーの1つだと判断したのです。ワトソン・ヘルス事業や同セキュリティ事業を立ち上げたときなど、AIは過去にも何度かグローバル・テクノロジーで取り上げられています。ですが、この数年間に起こったあらゆることを考慮して、全体的な視点から新たに見直すことにしました。

——GTOはどのように実施されるのでしょうか?

GTOは、IBM基礎研究所(IBM Research)が中心となって1年間かけて取り組むプロセスで、最終的には次の10億ドル規模のビジネスを創出する機会をもたらすエマージング・テクノロジーを勧告します。従業員がアイデアを投稿できるギットハブ(Github)のようなツールを活用した、非常に透明性の高いプロセスです。IBM基礎研究所の全員がアクセスでき、投票したりアドバイスしたりできます。そしてリーダーシ …

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