瀬戸内海に浮かぶ大三島(おおみしま)は愛媛県今治市に属する約65平方km(世田谷区よりやや広い)の島だ。人口は数千人、過疎化が進み、かつて10校あった小学校は2校に減った。26日、そんな大三島に配達用ドローンが降り立ち、ミニトマトなどの野菜を届けた。
ドローンを飛ばしたエネルギア・コミュニケーションズは、中国電力の子会社でインターネットサービスを地域に提供している。ネットワーク技術を活かして、ドローンが送信する映像配信の仕組みを構築し、安全に飛行できるようにした。また、日本のインターネット販売大手の楽天は配送サービスのノウハウを提供して、飛行実験をサポートした。
日本経済新聞(ペイウォール)によれば、実験では、1.7kg(最大積載量は2kg)の貨物を運ぶドローンが、約10分間の自動操縦で海を越えて飛来し、島内の「ドローンポート」に着陸した。米国では配達ドローン以外の用途がおおむね解禁されたが、国内でも人口集中地区の上空や操縦者の目視範囲を超えた飛行には国土交通省の許可が必要だ。都市部よりも飛行許可が下りやすいことも、大三島で配達ドローンを実証実験する理由だという。
また、楽天の安藤公二常務執行役員は「2020年の東京五輪のころまでに山間部はもちろん、都市部でも実用化したい。(ルールづくりのためには)国や関係各所と話していくことが必要だ」と述べたという。
楽天は日本国内のEC事業を巡ってアマゾンとの激突が続いており、離島へのドローン配達は、ECが普及しにくい地域にサービスを拡大する切り札になるかもしれない。ドローンにより、注文から配達先の選択、決済、配送までがスマートフォンで完結する未来を描いているのだ。
配達以外の用途でも、トンネルや太陽光パネルの検査、農薬散布などの分野でドローンの活用が期待されており、出版社のインプレスによる「ドローンビジネス調査報告書2016」によれば、日本国内のドローン市場は2015年の104億円から、2020年には1138億円に拡大すると見られている。
ただし、検査等の目的では完全に自動操縦とはいかない。日経産業新聞は26日の紙面で2020年には14万人のドローン操縦士が不足するとの見方を示した。ドローン関連の業界団体であるドローン操縦士協会は、東京湾岸に25日、4万平方メートルの潮見ドローン専用飛行場をオープンし、今後3年で5000人の操縦士の育成を目指す。飛行場で操縦技術を教えるドローンスクールジャパン東京校を開校したスカイロボットの伊藤義治取締役は、「操縦士を育てて、国内の産業用ドローンの発展に寄与したい」と述べたという。
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- MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]日本版 編集部
- MITテクノロジーレビュー(日本版)編集部