グーグル・ファイバーはなぜファイバーなしの世界へ方針転換するのか?
従業員の解雇、拡張計画の凍結を経て、グーグル・ファイバーは無線の未来へと向かっているようだ。 by Jamie Condliffe2016.10.27
米国国内の数カ所の都市でファイバー・インターネットの供給を目指すグーグルの計画に関わる噂は本当のだった。グーグルは拡張計画を凍結し、従業員数を削減し、最高経営責任者は退任する。
グーグル・ファイバー・プロジェクトを担うアルファベット(グーグル)の子会社、アクセスのクレイグ・バラットCEOはブログ上で計画の変更と自身の退任を伝えた。すでにグーグルが光ファイバーを敷設し始めた都市では計画通りに遂行するが、他の全ての拡張計画はいったん凍結するという。計画が未着工の都市では、従業員を削減する。しかしニューヨーク・タイムズ紙が指摘するように削減数は明らかにされていない。
バラットCEOによれば、グーグルは「テクノロジーと解決策が発展」し次第、インターネット供給のための敷設を続行したいと考えているようだ。
これは一体何を意味するのか。おそらくグーグル・ファイバーの未来は、つまるところ、ファイバーのない世界にあるのだろう。巨額の費用がかかるケーブルの敷設より、グーグルは他の会社と競合するが、超高速Wi-Fiを各都市に提供するのだ。その意欲を示すように、すでに、無線テクノロジーを利用して家庭にギガバイト級のインターネット・アクセスを供給するウェブパスを買収している。
グーグルのこの動きは合理的といってよいだろう。マイクロエレクトロニクスとソフトウェアの発展は、近年、大容量の無線システムをより身近なものへと変えてきた。この結果がWiGigとして知られる高速無線データ・テクノロジーだ。60ギガヘルツの電波で、従来のWi-Fiより10倍速くデータを送信できる。
グーグルはより一層競合が激しくなっきた領域に踏み込むことになる。フェイスブックは、インターネット接続がない40億人をさらにオンライン上に呼び込むための3点計画のひとつであるテラグラフ・プロジェクトの一環として、高速の公衆Wi-Fiシステムの敷設計画を猛烈に進めている。AT&Tは、ベンチャー子会社であるエアギグの事業の一環として、電線を利用した無線データの送信機能を都市と非都市部の両方に提供する。またスタートアップ企業のスターリーは、ギガバイト級の無線通信を実現できるというハードウェアを堂々と発表した。
明らかに、ブロードバンドの未来は無線にある。グーグルがそう気付いたのが、ファイバーの敷設に数百万ドルを投じた後だったのは残念だ。
(関連記事:Google Fiber, New York Times, “Google Fiber Stalls as the Industry Gears Up for Ultrafast Wireless,” “AT&T’s Plan to Hack the Electrical Grid to Provide Cheap Wireless Broadband,” “Facebook Is Testing a Super-Speed Public Wi-Fi System”)
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クレジット | Image courtesy of the LBJ Library | Flickr |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。