イーサリアムの大型更新延期、かすむ「非中央集権化」の理想
1月16日に開始予定だったイーサリアムの「コンスタンティノープル」アップグレードは、サードパーティから脆弱性を指摘されて急きょ延期となった。今回の延期は、セキュリティの面からだけでなく、イーサリアムが理想として掲げる「非中央集権化」の面からも、イーサリアムの開発者らに課題を突きつけている。 by Mike Orcutt2019.01.25
イーサリアムの大幅な刷新は延期となった。1月16日に開始して数日以内には終わらせるはずだったアップグレードは、イーサリアム・ブロックチェーン・ネットワークの性能を向上させる5つの新機能を取り入れ、今後のさらなるアップグレードへの足がかりとすることを意図したものだった。しかし、アップデートに伴う修正の1つによって、ネットワークがハッカーの攻撃に対してさらに脆弱になることがサードパーティの研究者たちによって判明し、いわゆる「ハードフォーク」は土壇場で持ち越しとなった。
この決定は、イーサリアムが進化して、やがては従来のWebを代替することを期待する人々にとっては単なる不都合では済まなかった。今回のことで再び、イーサリアムが大望を達成するには、支持者たちが好んでいる「非中央集権化」をある程度犠牲にする必要があることが明らかとなったからだ。
「コンスタンチノープル(Constantinople)」と呼ばれるアップグレードのうちの4つは、ネットワークの速度、効率、取引コストを改善することを目的としたものだった。5つ目は、これまでずっと物議を醸していたのだが、コンピューティング能力を使ってブロックチェーンをセキュアにする代償として採掘者(マイナー)たちが受け取る暗号通貨の報酬を減らすというもので、イーサリアム・ネットワークの経済を変えるはずのものだった。この変更は、ブロックチェーンの安全性を確保するため、コンピューティング能力に対して何にも増して報酬が与えられる現行方式から離れる計画への準備を採掘者たちに促すために意図されたものだ。
コンスタンチノープルは以前にも一度延期となったことがある。当初は2018年11月に予定されていたのだが、10月のテスト中に開発者たちがバグを発見し、アップグレードを2019年1月に延期することを決めた。今回はスムーズにことが運んでいたのだが、1月15日夜になって突然、スマートコントラクトを監査するスタートアップ企業であるチェインセキュリティ(ChainSecurity)が、別の潜在的な問題を見つけた。
チェインセキュリティのチームは、コンスタンチノープルの変更内容の1つに想定外の危険な結果を生む可能性を発見した。イーサリアムのブロックチェーン内に組み込まれて自動的に暗号通貨の取引をする小さなコンピュータープログラムであるスマートコントラクトの一部が、「リエントランシー …
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