生物学に触発、細胞のように振る舞う自律ロボット群
数百台もの超小型ロボットが、自己組織化の生物学的原理にヒントを得て、1つのチームとして機能するように開発された。
研究チームは300台のロボット群を、事前に設定したパターンに従うずに自己組織化させることに成功した。コイン大の各ロボットが受け取るプログラムは、赤外線を通じて周囲のロボットと通信する方法に関する基本的なルールのみ。
ロボット群は、生物組織内の細胞をまねて活動するようにプログラムされた。これらの遺伝的ルールは、ヒョウの斑点模様などの「チューリング・ パターン」と呼ばれる自然現象のシステムを模倣したものだ。
もちろん、人工的なロボット「群(スワーム)」はこれが初めてではない。ただし、過去のロボット群は、研究者によって事前に最終的な形状が定義されていた。英国ブリストル大学ロボット工学研究室で研究に参加したサビーヌ・ハウエルト博士は、「興味深いのは基本計画がないことです。ロボット群の形状は、ロボット間での簡単な交信によって形成されます」と述べている。
今回の成果は、単にコンセプトを実証したに過ぎない(むしろロボットの最終的な形状は不定形の小さな塊で、あまり大したものには見えない)。しかし、今後何らかのさらに興味深いものに向かう最初のステップである。「ロボット群は順応性に優れ、柔軟に変化できる頑丈なロボットなので、損傷してもロボットが新しいエリアで群れを再構成すればよいだけです」。バルセロナ科学技術研究所(Barcelona Institute of Science and Technology)のプロジェクト責任者ジェームス・シャープ博士はこう述べている。この研究は、12月19日発行のサイエンス・ ロボティクス誌に掲載された。
何千台もの超小型ロボットが形状を変え、地震後の被災状況を調査したり、一時的に橋などの立体構造物になったりするなど、さまざまな用途が考えられる。しかし、ロボット群が研究室から飛び出してそのような活躍をする姿を見るまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。