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ZMPが都心を実際に走らせて分かった、自動運転タクシーの課題と展望
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Future of Society Conference 2018 Event Report #2

ZMPが都心を実際に走らせて分かった、自動運転タクシーの課題と展望

ロボットベンチャーのZMPが2018年夏に実施した自動運転タクシーのサービス実証は大きな話題を集めた。都心での走行で見えてきた課題と展望をZMPの西村取締役が語った。 by Yasuhiro Hatabe2019.01.25

「私たちは、自動運転によって高齢者や子ども、障害を持つ方などの運転ができない方々に移動サービスを提供するというミッションを持っています。それに日の丸交通の富田和孝社長が共感してくださったことで、今回のサービス実証が実現しました」。

MITテクノロジーレビュー[日本版]が2018年11月30日に開催した「Future of Society Conference 2018」に登壇したZMPの西村明浩取締役はこう語り、2018年8月、都内で実施した自動運転タクシーの公道サービス実証について報告した。


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日の丸交通と組んだ都心での実証実験

ZMPは2014年に愛知県で自動運転の実証実験を始めている。だが当時は、「バス優先レーン行ったり来たりする程度のもの」(西村取締役)だったという。その後、神奈川県や東京都文京区にあるZMP本社周辺の道路で実証実験を重ね、2017年12月には日本初となる遠隔型自動走行システムの実証実験もお台場で実施している。

公道での実証を積み重ねたZMPが、タクシー事業者である日の丸交通と共同で取り組んだのが、乗客から実際に料金を徴収して走行する「自動運転タクシー公道サービス実証」だ。2018年8月27日〜9月8日(日曜日を除く)の12日間にかけて運行された自動運転タクシーは、タクシーサービスを日の丸交通が、自動運転および配車・管理システムの技術をZMPが担い、三菱地所・森ビルの協力のもとで、大手町から六本木までのおよそ5.3キロメートルのルートを走行した。

「日の丸交通の営業データによると、特に六本木側から東京駅・大手町へ出ようとする人に対してタクシーの供給が足りない。我々としても相当の交通量があり、実際の需要があるところでサービスを試していくことが大事だと一緒に考えた」と西村取締役はルート選定の経緯を説明する。

自動運転タクシーの乗車に1500人近くが殺到

今回の実証実験では、走行ルートを大手町〜六本木間に限定し、料金も定額の1500円。乗客は、事前募集に応じた人たちの中から抽選で選ばれた。2週間の募集期間に1490人の応募があったそうで、自動運転への期待がうかがえる。

乗客はあらかじめスマートフォンにアプリをインストールし、クレジットカード情報を登録する。乗車の際には車体にあるQRコードをスキャンするとドアが自動で開き、乗り込む。助手席の背面にあるタッチパネルで行き先と料金を確認し、シートベルトを締めるとタクシーが自動で走り出すという流れだ。

およそ30分走行して目的地に到着すると、タッチパネルに料金が表示され、乗客がOKを押すと決済がされてドアが開き、降りられるようになっている。

タクシーには日の丸交通のドライバーが乗車するが、基本的に運転操作はしない。タクシーはあらかじめ設定された走行ルートに従って、センサーによる全周囲の交通や信号を認識しながら走る。前方車に近づいたら速度を落とす、隣のレーンに十分な余裕がある時に車線を変更する、といった具合に、周囲の状況に応じて判断する。

西村取締役によると、実証にあたっては、熟練のタクシードライバーの走行データを集めたり、運転ノウハウのヒアリングをしたりして自動運転のアルゴリズムを改良したという。交通の流れに沿った自然な走行、乗り心地の向上を図っているとのことだ。

サービス実証で明らかになった課題と可能性

今回のサービス実証では、交通状況がよい状態であれば想定した流れで一通りの自動運転サービスを提供できたものの、「実際にはドライバーが操作したケースもあった」(西村取締役)という。たとえば、タクシーの前に車が急に割り込んできた場合、自動運転タクシーは減速する。その割り込んできた車が乗客を乗せるために止まった別のタクシーだった場合などには、自動運転タクシーはなかなか発進できなくなってしまう。そうしたケースでは、人間のドライバーが「乗客を待たせてはいけない」と判断して手動に切り替えたそうだ。

もう1つ難しいのが、車線変更だ。車線変更が必要なときには隣のレーンを見ながら進むが、なかなかスペースが空かない場合、自動運転タクシーは徐々に減速してしまう。技術的には、隣の車線を走る車が入れてくれるまでひたすら待てばよいが、「やはりドライバーが、周りの交通の邪魔になるとよくないからとのことで、手動に切り替えたケースがあった」。

あらゆる条件下での走行にはまだ課題が残っているといい、「サービスを安定的に提供するには、自動運転タクシー専用の乗降エリアや、専用レーンないし優先レーンがあると、よりスムーズに走らせられる。自動運転を今後取り入れていくのであれば、そうしたものが今後必要になることに気づいていただいたと思う」(西村取締役)。

一方、「自動運転+ドライバー」という形で実施したことによる発見もあった。

「基本は自動運転に任せてドライバーは 観光ガイド役などを担い、自動運転ではスムーズに行かない場合でのみ 運転を担当する。 完全自動運転を実現するまでの過渡期には、 そのようなサービスも成り立つのではないか」と西村取締役はいう。

「ZMPでは、自動運転車だけでなく、物流・倉庫などで使われるロボット台車、宅配ロボットの開発も進めている。さまざまな『移動』サービス、新しいモビリティによる自動化のイノベーションを支援していきたい」と西村取締役は展望を語り、講演を締めくくった。

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クレジット yahikoworks
畑邊 康浩 [Yasuhiro Hatabe]日本版 寄稿者
フリーランスの編集者・ライター。語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集、社内SEを経験。その後人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。2016年1月からフリー。
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