なぜ自動運転車は人間ぽく動作する必要があるのか?
ニュートノミーは、無人運転タクシーの「世界最大で最もお金をかけたフォーカスグループ」をシンガポールで運営している。 by Will Knight2016.10.19
無人運転車はどの程度人間ぽくすればいいのか?
シンガポールで無人運転型タクシーサービスを立ち上げたニュートノミーは、この疑問に答えようとしている。「不気味の谷」(ほとんど人間のように見えるが、十分には人間らしくないロボットに対する人間の感情的反応)の自律自動車版といってもいいだろう。
「好むと好まざるとにかかわらず、私たちは、プログラムどおりに運転する自動車の開発と、人間ぽく運転する自動車の開発との間にある谷に橋をかけなければなりません」とニュートノミーのカール・ラネンマCEOは18日、マサチューセッツ州ケンブリッジで開催されたEmTech MIT 2016で発言した。「明確な答えがあるわけではなく、人によって求める人間ぽさは異なります。私が研究しているのはそういうことなのです」
ラネンマCEOは、ニュートノミーは、テクノロジーに対する社会全体の反応を調べるためにサービスを始めたという。自動運転がどれだけ早く事業化できるかは、社会全体の受け止め方によって大きく変わるため、ニュートノミー等、自動運転を一般的に試用させている企業によるこうした探求は非常に重要だ。
「これは世界最大の、最もお金をかけたフォーカスグループ(ある商品、サービスへの意見をグループに対して質問することで得るマーケティング手法のひとつ)だと思ってください。極めて価値がある研究であり、情報を得るためにこれ以外の方法はありません」
ニュートノミーだけが無人自動車に取り組んでいるわけではない。しかしニュートノミーは、数週間前から一般的に利用可能な乗車サービスを提供した世界初の企業で、ウーバーは、その後、ピッツバーグのサービスで後に続いた(「試験中の自動運転タクシーはしばらく試験中のままな理由」参照)。
ラネンマCEOは、乗車した人々は急角度で上向きの受容曲線を示す、という。つまり、自動運転タクシーの最初の乗車から数分間は落ち着かない様子だが、すぐに満足感を得て、最終的には退屈に変わる。ただし、特に非人間的な運転動作に驚いて、居心地の悪さを感じることがまだあるという。
「私たちの最初の無人乗用車は、軌道を走る路面電車のように(ただまっすぐ)運転していたようです。このような違和感は人々を排除してしまいます。今、私たちは(違和感を減らすことが)極めて重要だと深く理解しています」
米国のいくつかの都市でグーグルが試験中の無人自動車運転(おそらく最も目立つ実験だ)は、運転動作の重要さを明らかにしている。自動車が信号で止まってから発進する際の不自然な動きは、確実に事故を招いてる(“Google’s Self-Driving Car Probably Caused Its First Accident”参照)のだ。
無人自動運転は、さまざまな文化に適合した運転をする必要もあるだろう。たとえば、カリフォルニア州の道路で訓練された自動車は、厚かましさで悪名高いボストンやニューヨークなどの路上では、あまりにのんびりした運転をするかもしれない。
ニュートノミーのシンガポールでの実験は、ウーバーや他の無人タクシーが直面する、別の問題も提起している。ラネンマCEOは、タクシーサービスの人間的な側面(乗客が荷物を載せるのを助けしたり、忘れ物の携帯電話を返却したりすること)に対して、無人自動運転車はなんらかの代替策を考えていく必要がある、という。
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クレジット | Photograph by Justin Saglio |
- ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
- MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。