米財務省、ビットコインアドレスをブラックリストに初掲載
1つアドバイスしておこう。もしあなたが犯罪を企てるハッカーで、米国当局を出し抜こうとしているのなら、ビットコインは使わないほうがいい。
米財務省外国資産管理局(OFAC)が11月28日に発表した内容が話題となっている。いわゆる特別指定国民リストに、ビットコインアドレスが2つ、初めて追加されたのだ。米財務省によると、このリストには「国を特定しないプログラム下で指定されたテロリストや麻薬密売人などの個人や集団、法人」に加え、「指定された国が所有または支配する個人や企業、あるいは指定された国に代わって活動する個人や企業」の識別情報が掲載されている。同リストに掲載された個人や企業の資産は封鎖され、米国民は「そうした個人や企業との取引を一般的に禁止」されている。
特別指定国民リストに追加された2つのアドレスは、悪質なランサムウェアを利用して入手したビットコインの取引に関わったとされる、アリ・コロシャディザディ(Ali Khorashadizadeh)とモハマド・グホルベニアン(Mohammad Ghorbaniyan)という2人の男のものだ。OFACによると、彼らはこれらのアドレスを使用して、数百万ドルに相当する7000回以上の取引をしていた。
これは、少なくとも象徴的な意味で一大事である。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこのニュースを「現金に代わってコードで違法な利益が取り引きされる新時代の兆候」であると報じている。しかし、これは驚くべきことではない。まず、OFACは3月に電子マネーアドレスを同リストに追加することを検討していると発表していた。さらに、MITテクノロジーレビューがこれまで指摘してきたように、ビットコインは犯罪者を保護するものではない。司法当局はブロックチェーンから捜査の手がかりを得られるようになってきているのだ。
最も重要なのは、この件が多くの新しい疑問を生じさせるということだ。犯罪者はただアドレスを変えればよいのではないか? ブラックリストに載っているアドレスと取引したアドレスはどうなるのか? そのアドレスも同様にリストに載ってしまうのか? OFACは猫と鼠の関係のような終わりのないゲームに足を踏み入れるのか? 国際的な犯罪者がビットコインではなく、より追跡の難しいモネロ( Monero)やジーキャッシュ(Zcash)のようなコインを使用した場合はどのように対応するのか? といった疑問である。
こうした疑問のいくつかはすぐに答えがわかるかもしれない。米財務省が「電子マネーやサイバー上の脆弱性に付け込もうとするイランやその他の米国に敵対する政権を厳しく追跡し、不正を働く対象へのさらなる(マネーロンダリングやテロの資金繰りの)対策を進める」と発表しているからだ。となると、もう1つ疑問が生じる。この発表は犯罪者の取り締まりの強化を目的としているのだろうか、それとも犯罪者にメッセージを送ることが目的なのだろうか。