探査機インサイト火星着陸へ、「恐怖の7分間」乗り越えられるか
約3億マイル(5億キロ)におよぶ旅を経て、NASAは探査機インサイト(InSight)の火星への着陸を試みようとしている。
まさに手に汗握る瞬間となるであろう。2018年5月5日に打上げられた探査機インサイトの火星着陸を11月26日に控え、NASAのジェット推進研究所(JPL)の科学者たちは、コースの最終調整に入っている。同機は、太平洋時間の正午頃(日本時間11月27日午前5時頃)に火星に着陸する予定である。
インサイトは、6年前にキュリオシティ(Curiosity)が火星への着陸に成功した時と同様、「恐怖の7分間」を体験することになる。インサイトは火星の薄い大気圏に時速1万2,300マイル(約2万キロ)で突入した後、ほとんど急停止とも言える時速5マイル(約8キロ)にまで、急激に速度を落とさなければならない。しかもこれらすべてを、7分以内に行なう必要がある。インサイトは、2008年に火星へのミッションに成功したフェニックス(Phoenix)の着陸技術を利用して着陸を試みる。パラシュートを使って減速した後、着陸直前に12のスラスタ(姿勢制御用推進機)を噴射し、願わくば安全に、衝撃を吸収する3本の脚で着陸するのである。着陸目標地点は、エリシウム平原(Elysium Planitia)として知られている平らな場所である。
失敗する可能性は決して低くない。実際に、半分以上の火星探査ミッションが、いままで失敗に終わっている。欧州が打上げた火星探査機スキャパレリ(Schiaparelli)は、2016年にコンピューターの不具合によって制御不能の回転状態となり、火星表面に激突してクレーターを残す惨事に終わっている。過去の事例の中には、失敗を防げたと思われるものもあった。不名誉な失敗に終わったマーズ・クライメイト・オービター(Mars Climate Orbiter)は、メートル法とインペリアル法を用いた技術者が混在したことが失敗の原因であった。
他の火星探査機とは異なり、インサイトは火星の表面の赤土の下を掘り下げて探索することを目的としている。安全に着陸した後、ロボットアームが地表から最大16フィート(約5メートル)掘り下げる。そこに、火星の温度を計測する「HP3」などの科学実験装置を設置する。 もう1つの実験では、火星での地震の兆候を探る地震計を設置する。双方の実験は、火星や地球のような岩石でできた惑星はどのように形成されたのか、構造学的見地から火星はどの程度活動的であるのか、隕石がどのくらいの頻度で衝突しているか、などについての貴重な情報を提供することになるだろう。
それだけではない。2つの小型人工衛星がマーズ・キューブ・ワン・ミッションの一部として、編隊を組んでインサイトの後方を飛行している。それらは、インサイトから送られてくるデータを中継して、JPLの管制室に送る役割を果たす。
インサイト火星着陸の一部始終は、インターネットからライブで視聴可能だ。もっと本気でこのイベントを楽しみたい人には、世界各地で着陸を祝うパーティが計画されており、最寄りの会場を探すこともできる。着陸の成功はすぐにわかるかもしれないし、はらはらしながら2、3時間待つことになるかもしれない。