キログラムの定義が130年ぶりに変更、プランク定数で再定義
フランスのベルサイユで開催された、60ヵ国を超える国々の科学者が参加した国際会議「国際度量衡総会」において、11月16日、キログラムの定義の変更が決定された。
キログラムは元々、水1リットルの質量と等価のものとして定義されていた。科学者たちは1889年から、ある物体に基づいてキログラムを定義してきた。その物体とは、パリで厳重に保管されてきた国際キログラム原器、通称「ル・グランK(Le Grand K)」として知られるプラチナ合金製の円筒型の物体だ。ル・グランKの大きな欠点は、経年変化などで円筒が変化すると、全世界の計測システムも変化してしまうことだ。1980年代にル・グランKの測定が実施された際、想定していた質量よりも数マイクログラム軽いことが判明し、ル・グランKの基準に基づいて製品を製造していた製造業者は、製品質量の再計算を余儀なくされた。
今後、キログラムは、その物体の質量を相殺するのに必要な量の電気に置き換えて測定されるようになる。質量を電流に関連付けるには、プランク定数と呼ばれる「h」で示される値を用いる。プランク定数は、ドイツの物理学者マックス・プランクが光子の振動数をエネルギーに換算するのに用いた物理定数である。プランク定数は非常に小さな数字であるため、ワット天秤(キブル天秤)と呼ばれる超精密な天秤で計測される。同天秤を用いて驚くべき精密さで電流を測定することで、研究者はプランク定数を0.000001%の精度で計算することが可能だ。
今回決定された新しい定義により、すべてのキログラムを単一の物体「ル・グランK」に基づいて測定する必要がなくなり、ワット天秤があれば誰でも質量を測定できるようになる。すなわち、キログラムの新たな定義が、時間の経過とともに変化し得る何らかの物体ではなく、自然の普遍的な物理定数に基づくことを意味している。