グーグルがNASAと提携
「量子超越性」実証へ
グーグルと米国航空宇宙局(NASA)が量子コンピューティング分野で新たな協力関係を築いた。NASAが保有するスーパーコンピューターを使い、グーグルが開発した量子プロセッサーの量子超越性を証明する計画だ。 by Mark Harris2018.11.14
MITテクノロジーレビューが入手した航空宇宙契約(Space Act Agreement)によると、グーグルは今後数カ月以内に「量子超越性」を証明するため、米国航空宇宙局(NASA)に協力を求めていることが分かった。
量子超越性とは、十分な性能を持つ量子コンピューターであれば、古典的なスーパーコンピューターには不可能な特定の数学的計算を完了できるという概念である。だが、いまのところ実証はされていない。量子超越性を証明できれば大騒ぎになるだろう。未解読の暗号を解いたり、人工知能(AI)の進歩を加速したり、天気予報を改善したり、あるいは分子の相互作用や金融システムを極めて詳細にモデル化したりできる可能性を持つ、新たなコンピューターの市場を切り開くことになるからだ。
7月に締結されたこの契約についてNASAに問い合わせたところ、次のような回答が得られた。「グーグルの量子プロセッサーで実行される量子回路の計算結果を分析し、(中略)古典的なシミュレーションと比較し、グーグルのハードウェアの検証と量子超越性の基準の確立を支援します」。
グーグルはMITテクノロジーレビューに対し、契約内容に「ブリッスルコーン(Bristlecone)」と呼ぶ最新の72キュービット(量子ビット)の量子チップに関するものが含まれていることを認めた。古典的なコンピューターは1または0で表されるバイナリ・ビットで情報を格納するが、量子コンピューターは1と0が重ね合わさった状態で存在できるキュービットを用いる。ある特定の問題に関しては、古典的コンピューターではかなりの時間を要する計算でも、キュービットを用いることで素早く回答を導き出せるのだ。
グーグルの量子コンピューター開発を主導する物理学者のジョン・マルティニス教授(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)は、ブリッスルコーンには量子超越性を達成できる性能があると考えている。だが、誰もがこの考えに同意しているわけではない。5月にアリババ(Alibaba)の研究者が発表した論文は、ブリッスルコーンの性能はシミュレーションを実行 …
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