地球外生命体探索で人類はまだ、湯船一杯分の宇宙しか探していない
これまでの天文学者の努力にも関わらず、地球外知的生命体が存在する証拠は一向に見つからない。ペンシルバニア大学の研究者は、天文学者の探索対象を含む8次元空間の数学モデルを定義して、これまでに探索済みの8次元空間の体積と探索すべき体積を定量的に比較することで、地球外知的生命体探査(SETI)が失敗したわけではないことを示した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.10.10
地球外に生命が存在する可能性はあるが、その証拠がない。この矛盾はフェルミのパラドックスと呼ばれる。
これはたいへんな難問だ。一面を見れば、生命を生み出す条件は地球だけに限られるはずはないという抗いがたい感覚がある。その認識に立てば、宇宙において生命はありふれたものに違いないと考えられる。
しかしその一方で、天文学者は地球外の知的生命体の兆候を求め、宇宙という干し草の山から針を探したが、何も見つけられなかった。その結果、多くの観測者が地球外生命体の明確な兆候は存在しないと結論づけた。
しかしこれに異を唱える人もいる。2010年、天文学者のジル・タータ-博士らは、地球外生命体の電波信号はこの銀河内に明確にありふれて存在するのだが、これまでの探索が不完全だったため天文学者は見つけられなかったのだと主張した。
これまでの調査はいわば、ガラスコップ1杯の海水を調べて、地球の海のどこかにいるであろう生命の証拠を求めているようなものだとターター博士らはいう。
鮮やかな比喩だ。しかし、地球外知的生命体探査(SETI)に相当な労力が投入されてきたことを考えると、どれほど的確と言えるだろうか。
ペンシルバニア州立大学のジェイソン・ライト准教授らの研究が、その問題に1つの答えを示した。ライト准教授らは天文学者が地球外生命体の兆候を探すため探索する必要があるパラメーター空間を特徴付けた。ライト准教授らによると、探索すべき空間は非常に広大であり、これまでのSETIはその表面をなぞっただけに過ぎないという。
ライト准教授の方法は直截的だ。まずは天文学者が探索するべき空間の数学モデルを作成し、次に、これまで調査されてきた空間の範囲を計算するというものだ。
「私たちは『宇宙という干し草の山』というメタフ …
- 人気の記事ランキング
-
- What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- How this grassroots effort could make AI voices more diverse 世界中の「声」を AIに、180言語を集める草の根プロジェクト