KADOKAWA Technology Review
×
始めるならこの春から!年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
米国の脅威は中国ではない、
「基礎研究の軽視」だ
元グーグル副社長語る
Steve Jennings | Getty
カバーストーリー Insider Online限定
The US is hastening its own decline in AI, says a top Chinese investor

米国の脅威は中国ではない、
「基礎研究の軽視」だ
元グーグル副社長語る

中国の著名な投資家兼起業家であるカイフ・リー(元グーグル副社長)が、米国と中国の人工知能(AI)開発競争に関して、MITテクノロジーレビューに語った。米国にとっての本当の脅威は、中国ではなく、基礎的なAI研究が後回しになっていることであり、AIの優秀な人材が産業界に吸い上げられていることだという。 by Will Knight2018.10.09

北京に拠点を置く著名な投資家であり、起業家でもあるカイフ・リー(李開復)は、中国の人工知能(AI)の今後の可能性について語った後、 米国に向けたメッセージを述べた。リーによると、AI分野における米国の卓越性に対する真の脅威は、中国の台頭ではなく、米国政府が現状に満足してしまうことだという。

完全に公平な視点からではないにせよ、この問題を理解するにあたってリーは適任だ。というのも、同氏は1980年代にカーネギーメロン大学(CMU)で機械学習を研究し、1990年代には中国のマイクロソフト研究所を牽引。2000年代にはグーグルの中国進出で陣頭指揮を執っているのだ。現在、リーは、北京に拠点を置くAIに焦点を当てたインキュベーターであるシノベーション・ベンチャーズ(Sinovation Ventures)を率いている。中国と米国におけるAIの急激な隆盛を綴った書籍「AIスーパーパワーズ(AI Super-Powers)」の著者でもある。

リーによると、米国の本当の脅威は、中国との競争ではない。むしろ基礎的なAI研究に投資がなされず、後回しになっていることにあり、問題は悪化し続けていると語る。米国の大手企業が、AI分野の多くのトップ人材の多くを取り込んでしまっているからだ。一般的に、テック企業は学術界ほど基礎的なブレークスルーに重点を置かない。学術界は企業との研究者確保争いに悪戦苦闘中だ。

大きく考える

「米国は、現在の技術では解決不能な本当に大きな課題に挑戦すべきなのです」とリーはMITテクノロジーレビューに語った。データから学習する大規模な人工ニューラル・ネットワークを用いた深層学習技術が驚くほど進化したことが大きな契機となり、AI分野への関心が再燃している。しかし、深層学習には膨大な量のデータが必要で、狭い領域でしか機能しない傾向がある。「深層学習の限界を克服するには、次世代の一連の技術が必要です。営利企業がこの手の取り組みに重点を置くことはないでしょう」。

おそらく、AI開発競争に中国は勝つだろう。活気あふれる中国のテック業界は、すでに驚くべき速さでAIを取り込んでいる。中国政府は2017年に、同国のAI産業を発展させるための広範な計画を発表した(「国家レベルでAIに賭ける中国から何を学ぶべきか」を参照)。 一方、米国政府は、AI産業の発展については自国の強固なテック業界にゆだねており、放任主義を採ってい …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
  2. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  3. This Texas chemical plant could get its own nuclear reactors 化学工場に小型原子炉、ダウ・ケミカルらが初の敷地内設置を申請
  4. Tariffs are bad news for batteries トランプ関税で米電池産業に大打撃、主要部品の大半は中国製
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る