米当局がアリババ子会社の米国送金サービス企業買収に「待った」
米国当局は、アリババ傘下のデジタル決済会社であるアント・フィナンシャル(Ant Financial)による米国の送金サービス、マネーグラム(Moneygram)の買収を認めないとす決定を下した。
MITテクノロジーレビューが2017年のスマート・カンパニー50に選んだアント・フィナンシャルは中国のテック企業であり、モバイル決済などの金融事業から生じる大量のデータを扱っている。2014年に、電子商取引大手のアリババが「アリペイ(Alipay)」を運営するために設立した会社だ。アリペイは中国で圧倒的なシェアを持つモバイル決済プラットフォームであり、ユーザー数は5億2000万人を誇る。コンピューター・ビジョンや自然言語処理といったツールを使って金融サービスを再構築している(「中国の巨大「テックフィン」企業アントの驚くべき正体」を参照)。
2017年、アント・フィナンシャルは世界進出を試み、米国の送金サービス会社のマネーグラムを12億ドルで買収しようとした。しかし両社は2018年1月2日、米国政府の対米外国投資委員(CFIUS)が買収計画を却下したと発表した。ロイターの報道によれば、買収計画が米国の安全保障に懸念を及ぼし得ると当局に判断されたという。米国市民の識別に使われる可能性のある機密データが、中国企業に渡ってしまうことになるからだ。
今回の計画頓挫は、アリババの世界的野望にとって痛手になるだろう。2017年6月にアリババのジャック・マー会長はデトロイトで講演して、米国の小規模事業者に対し、アリババのショッピング・サイトを通じて中国での販売を呼びかけた。2018年1月には、アリババのクラウド・コンピューティング部門が運用する新たなデータセンターが、インドのムンバイに開設される。
マネーグラムを買収できていれば、アント・フィナンシャルの市場は200以上の国の約35万拠点まで広がるはずだった。しかし当面は実現しないことになる。両社は買収計画に代わるものとして、米国はもちろん、中国やインド、フィリピンなどのアジア市場における送金とデジタル決済ビジネスについて別の形での提携を検討すると発表した。
- 参照元: Reuters