世界の二酸化炭素排出量、2019年は横ばい=IEA報告
二酸化炭素排出量の増加は横ばい状態だが、高まる気候変動の危機を回避できるほどの大幅な削減の兆候はまだない。
国際エネルギー機関(IEA)の新しい報告書によると、2019年のエネルギーの使用に伴うCO2の排出量は世界で330億トンだった。世界経済が約3%成長したにもかかわらず、排出量は2年連続の増加となった2018年と同じ値に抑えられた。国際共同研究団体グローバル・カーボン・プロジェクト(Global Carbon Project)による2019年の年次報告書は、化石燃料による排出量は2019年に約0.6%増加したと推定しているが、わずかに低下している可能性もあると推定していた。
IEAは先進国の電力分野における排出量の減少が横ばい傾向の要因だとしている。米国や欧州連合(EU)などの地域では太陽光や風力の発電量が増え、石炭から排出量の少ない天然ガスへの移行が進んでいる。他の地域、主に日本と韓国では原子力発電の再稼働や新設が削減に貢献した。主要経済国の気候が2018年よりも穏やかであったことや、インドなどの一部の新興国で経済成長が鈍化したことも要因として挙げられる。
一方で、開発途上国では全体の排出量が約4億トン増加し、エネルギー消費量ひいては石炭需要が依然として拡大している。IEAの報告書は、農業、土地の利用方法の変化、山火事などの他の要因による温室効果ガスの排出量は含んでおらず、それらを含めれば全体に影響する可能性がある。
2019年にエネルギー関連の排出量が横ばいだったこと自体はよいニュースだ。だが、気候変動に対処するために必要な二酸化炭素汚染の削減ペースからはほど遠い。国連の気候変動に関する政府間パネルによると、世界の気温の2℃の上昇を確実に防ぐには、排出量を10年で25%削減し、2070年までにゼロにする必要がある。2℃の上昇は世界中のサンゴが死滅してしまうほどの暑さだ。猛暑や干ばつ、洪水のリスクを回避するには1.5℃に温暖化を抑える必要があり、2030年までに2010年の排出量の半減を目指す必要がある。